ふるさと納税は自治体財政にどう影響する?受入額と控除の見方

ふるさと納税は、自治体財政に一定の影響を与える制度になっています。

ただし、その影響は一方向ではありません。寄附を受ける自治体には寄附金収入が入り、地域事業の財源になります。一方で、寄附した人が住んでいる自治体では、個人住民税の控除によって税収が減る面があります。

国税庁では、ふるさと納税について、自分で選んだ自治体に寄附した場合、寄附額のうち2,000円を超える部分が、所得税と個人住民税から控除される制度として説明されています。制度の入口は自治体への寄附ですが、その後の税控除を通じて、居住地の自治体財政にも関係します。

全国規模で見ると、ふるさと納税の受入額はすでに1兆円を超える規模です。総務省の現況調査結果を参照した横浜市税制調査会報告書でも、令和6年度のふるさと納税受入額は約1兆2,728億円、令和7年度課税における住民税控除額は約8,710億円、控除適用者数は約1,080万人と示されています。

ふるさと納税が自治体財政にどの程度影響しているかを見るには、「寄附を受ける自治体」と「住民税が控除される自治体」を分けて考える必要があります。


目次

自治体財政への影響は受入と控除で分けて見る

寄附を受ける自治体には寄附金が入る

ふるさと納税では、寄附者が選んだ自治体に寄附金が入ります。

寄附を多く受け入れる自治体にとっては、ふるさと納税が地域事業に使える財源の一部になります。使い道は自治体によって異なり、子育て、教育、防災、福祉、観光、産業振興、環境保全、文化財保護など、さまざまな分野に活用されます。

通常の税収とは違い、ふるさと納税は住民だけでなく、地域外の人からも寄附を受けられる点が特徴です。自治体にとっては、地域の取り組みを外へ伝え、使い道に沿って活用できる財源を得るきっかけになります。

居住地の自治体では住民税控除が生じる

一方で、寄附した人が住んでいる自治体では、個人住民税の控除が関係します。

国税庁は、ふるさと納税について、寄附額のうち2,000円を超える部分が、一定の限度額まで所得税と個人住民税から控除される制度として案内しています。つまり、寄附先の自治体に寄附金が入るだけでなく、居住地の自治体の住民税にも反映される仕組みです。

この両方を見ることで、自治体財政への影響を、受入側と控除側の両方から確認できます。


全国規模では大きな財源の動きになっている

受入額は自治体財政で無視しにくい規模

令和6年度のふるさと納税受入額は、全国で約1兆2,728億円とされています。これは、ふるさと納税が自治体財政の中で無視しにくい規模になっていることを示しています。

もちろん、すべての自治体に同じように寄附が入っているわけではありません。多くの寄附を集める自治体もあれば、受入額が小さい自治体もあります。返礼品の設計、地域産品、知名度、災害支援、使い道の見せ方、ポータルサイトでの見え方などによって、受入額には差が出ます。

そのため、全国合計では大きな金額でも、個別の自治体ごとに見ると影響の大きさはかなり異なります。

住民税控除額も大きくなっている

ふるさと納税の影響は、受入額だけでは見えません。

令和7年度課税における住民税控除額は、全国で約8,710億円とされています。控除適用者数も約1,080万人とされ、多くの人が制度を利用していることが分かります。

この住民税控除額は、居住地の自治体側から見ると、税収の減少に関係します。特に人口が多く、ふるさと納税をする住民が多い自治体では、住民税控除額が大きくなりやすいです。

そのため、ふるさと納税の財政影響は、地方の自治体だけでなく、都市部の自治体にも関わる話になります。


寄附を受ける自治体への影響

使い道に沿って活用できる財源になる

寄附を受ける自治体にとって、ふるさと納税は使い道に沿って活用できる財源の一部になります。

自治体が使い道を示し、その目的に賛同した人から寄附を受けることで、地域事業に使える財源が増えます。たとえば、子育て支援、学校整備、防災備蓄、地域医療、観光振興、農林水産業の支援など、自治体ごとの課題に応じて活用されることがあります。

通常の税収だけでは進めにくい事業に充てられる場合もあり、自治体にとっては地域外から資金を呼び込む仕組みとして意味があります。

返礼品や募集経費も差し引いて見る必要がある

ただし、寄附額がそのまますべて自治体の事業に使えるわけではありません。

ふるさと納税には、返礼品の調達費、配送費、ポータルサイト関連費用、広告費、事務処理費などがかかります。返礼品を用意する自治体では、寄附金の一部がこれらの経費に使われます。

そのため、自治体財政への影響を見るときは、受入額だけでなく、実際にどれだけ地域事業に使えるのかも重要です。

寄附額が大きい自治体でも、経費が大きければ、地域事業に残る金額は受入額ほど大きくありません。反対に、寄附額が大きくなくても、明確な使い道に沿って活用されていれば、地域の取り組みにとって意味のある財源になります。

寄附が集中する自治体では財政運営への影響が大きい

ふるさと納税は、寄附が特定の自治体に集中しやすい面があります。

地域産品が強い自治体、知名度がある自治体、返礼品の設計が分かりやすい自治体、使い道の発信が伝わりやすい自治体などには、寄附が集まりやすくなります。

横浜市税制調査会報告書では、総務省の現況調査結果を参照し、令和6年度の受入額上位20自治体で全国受入額の約2割を占めることにも触れています。

寄附額が大きい自治体では、ふるさと納税が財政運営の中で重要な位置を占めることがあります。ただし、ふるさと納税は毎年同じ額が安定して入るとは限りません。制度改正、返礼品ルール、寄附者の関心、ポータルサイトの仕様変更などによって、受入額が変動する可能性があります。

そのため、ふるさと納税は有力な財源になり得る一方で、安定した税収と同じように扱うには注意が必要です。


居住地自治体への影響

住民税控除によって税収が減る

ふるさと納税では、寄附した人の居住地自治体で住民税控除が生じます。

居住地自治体から見ると、住民が他の自治体へ寄附した分について、翌年度以降の住民税収に影響が出る形になります。特に都市部では、住民数が多く、制度利用者も多くなりやすいため、控除額が大きくなる場合があります。

横浜市税制調査会報告書でも、令和7年度課税における住民税控除額の上位20自治体は、政令指定都市や特別区が多くを占め、人口が多い自治体ほど控除額・控除適用者数が多い傾向に触れています。

このため、ふるさと納税は「地方に寄附金が入る制度」という面だけでなく、「居住地自治体の住民税収が減る制度」という面も持っています。

地方交付税による調整がある自治体もある

住民税控除による減収は、自治体によって受け止め方が異なります。

財務省の資料では、交付団体について、ふるさと納税による減少分の75%が基準財政収入の減少分として反映され、交付税措置によって補填されると説明されています。

一方で、不交付団体では同じ形の補填はありません。浦安市も、地方交付税交付団体の場合は減収額の75%が地方交付税で補てんされる仕組みがある一方、浦安市は不交付団体のため補てんがなく、市税流出分は減収になると説明しています。

このため、居住地自治体への影響は一律ではありません。

地方交付税の交付団体では一定の調整がありますが、補填されない部分や、不交付団体での影響は残ります。自治体財政全体の中で、住民税控除と交付税措置をあわせて見る必要があります。


自治体ごとの差が大きい制度

受入側と控除側が一致しない

ふるさと納税の特徴は、寄附を受ける自治体と、住民税控除が生じる自治体が異なることです。

たとえば、ある自治体に多くの寄附が集まる一方で、別の自治体では住民が多く寄附を行うため、住民税控除額が大きくなることがあります。

この仕組みにより、自治体間で財源の流れが変わります。

ただし、これは国が財政力に応じて自動配分する地方交付税とは異なります。ふるさと納税では、寄附者が寄附先を選びます。寄附の流れは、地域の魅力発信、返礼品、使い道、災害支援、地域への思いなどに左右されます。

都市部と地方部で見え方が変わる

都市部の自治体では、住民税控除額が大きくなりやすく、税収減の影響が注目されます。住民が多いため、ふるさと納税を利用する人の数も多くなりやすいからです。

一方、地方部の自治体では、寄附を受け入れることで財源を得られる場合があります。地域産品や観光資源、地域課題の発信が寄附につながることもあります。

ただし、地方部の自治体であれば必ず多くの寄附が集まるわけではありません。寄附の受入額には自治体ごとの差が大きく、返礼品や発信力、事務体制なども影響します。

そのため、ふるさと納税の財政影響は「都市部は減収側、地方部は受入側」と単純に分けることはできません。自治体ごとの受入額、控除額、交付税措置、経費、使い道を分けて見る必要があります。


自治体財政にどの程度影響しているのか

全国規模では大きな財源の動きになっている

全国規模で見ると、ふるさと納税は自治体財政の資金の流れに大きく関わる制度になっています。

受入額が1兆円を超え、住民税控除額も数千億円規模になっているためです。寄附を受ける自治体、税収が控除される自治体、地方交付税による調整などを含めると、自治体財政全体の資金の流れに関わる制度といえます。

ただし、全国の数字だけでは個別自治体への影響は分かりません。

ある自治体ではふるさと納税が重要な財源になっている一方で、別の自治体では住民税控除による減収が課題になることがあります。さらに、返礼品や募集経費によって、受入額と実際に地域に残る金額にも差があります。

自治体ごとに影響の方向が違う

ふるさと納税の影響は、自治体によって方向が異なります。

自治体の立場主な影響
寄附を多く受ける自治体寄附金収入が増え、地域事業の財源になる
住民の寄附が多い自治体住民税控除により税収が減る
交付団体減収分の一部が地方交付税で調整される
不交付団体同じ形の交付税補填がなく、影響が残りやすい
経費が大きい自治体受入額ほど地域事業に残らない可能性がある

このように、ふるさと納税は「自治体財政にプラス」「自治体財政にマイナス」と一言で言い切れる制度ではありません。

どの自治体の立場から見るかによって、見え方が変わります。


ふるさと納税を財政面で見るときのポイント

受入額だけで判断しない

自治体財政への影響を見るとき、まず注目されやすいのは受入額です。

しかし、受入額だけでは十分ではありません。返礼品や配送、募集にかかる経費を差し引いたうえで、どれだけ地域事業に使えるのかを見る必要があります。

また、寄附金の使い道が明確かどうかも大切です。教育、防災、子育て、福祉、産業振興など、自治体がどの事業に活用しているのかを見ると、財政面での意味が見えてきます。

控除額と交付税措置もあわせて見る

もう一つ大切なのが、住民税控除額です。

居住地自治体では、住民税控除による税収減が生じます。交付団体では地方交付税による調整がありますが、不交付団体では同じ形の補填がありません。

そのため、ふるさと納税の財政影響を見るときは、次の3つを分ける必要があります。

見る項目意味
受入額寄附先自治体に入る金額
控除額居住地自治体の住民税に反映される金額
経費・交付税措置実質的な財政影響を見るための要素

この3つを分けると、受入側と控除側の両方から財政への影響を見られます。


Q&A(よくある疑問)

ふるさと納税は自治体財政に大きく影響していますか?

全国規模では大きな影響があります。令和6年度の受入額は約1兆2,728億円、令和7年度課税の住民税控除額は約8,710億円とされており、自治体間の財源の流れに関わる制度になっています。ただし、影響の大きさは自治体ごとに異なります。

寄附を受けた自治体はその金額をすべて使えるのですか?

寄附額がそのまますべて地域事業に使えるわけではありません。返礼品の調達費、配送費、ポータルサイト関連費用、広告費、事務処理費などがかかります。そのため、受入額だけでなく、実際に地域事業に使える金額を見る必要があります。

住民税が減る自治体には補填がありますか?

地方交付税の交付団体では、ふるさと納税による減少分の75%が基準財政収入の減少分として反映され、交付税措置によって補填される仕組みがあります。ただし、不交付団体では同じ形の補填はありません。

都市部の自治体ほど影響を受けやすいのですか?

都市部では人口が多く、ふるさと納税を利用する住民も多くなりやすいため、住民税控除額が大きくなる場合があります。ただし、影響は自治体ごとの財政規模、交付税措置、住民の制度利用状況によって変わります。

自治体財政を見るときは何を確認すればよいですか?

受入額、住民税控除額、募集経費、返礼品関連費用、交付税措置、寄附金の使い道を見ると、財政への影響を把握しやすくなります。受入額だけではなく、地域事業にどう使われているかを見ることが大切です。


まとめ

ふるさと納税は、自治体財政に一定の影響を与える制度です。

寄附を受ける自治体には寄附金が入り、地域事業の財源になります。一方で、寄附した人が住む自治体では、個人住民税の控除によって税収が減る面があります。

令和6年度の受入額は約1兆2,728億円、令和7年度課税の住民税控除額は約8,710億円とされており、全国規模では大きな財源の動きになっています。

ただし、影響は自治体ごとに異なります。寄附を多く受ける自治体、住民税控除額が大きい自治体、交付税措置の有無、返礼品や募集経費の大きさによって、財政への見え方は変わります。

ふるさと納税を自治体財政の面から見るときは、受入額だけでなく、控除額、経費、交付税措置、寄附金の使い道をあわせて見ることが大切です。


参考情報

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