ふるさと納税は、日本の自治体へ寄附し、その寄附が所得税や個人住民税の控除に関係する制度です。国税庁では、自分で選んだ自治体に寄附した場合、寄附額のうち2,000円を超える部分について、一定の範囲で所得税と個人住民税から控除を受けられる制度として説明されています。
海外にも、地域を応援する寄附制度や、寄附に税制上の優遇がある制度はあります。
ただし、韓国・アメリカ・イギリスの制度を見ても、日本のふるさと納税とまったく同じ仕組みではありません。
日本のふるさと納税は、自治体への寄附、所得税・個人住民税の控除、返礼品、居住地自治体の住民税控除が組み合わさっている点に特徴があります。海外の制度を見るときは、「地域支援」「税制上の優遇」「返礼品」のどの部分が似ているのかを分けると、それぞれの違いが見えてきます。
海外にもふるさと納税と似た仕組みはある?
海外にも、寄附を通じて地域や公益活動を支える仕組みはあります。
ただし、ふるさと納税のように、地方自治体へ寄附し、所得税や個人住民税の控除に関係し、返礼品も受け取れる仕組みがそのまま使われているわけではありません。
たとえば、アメリカやイギリスでは、寄附に関する税制上の優遇はありますが、主な対象は慈善団体や公益団体などです。アメリカでは適格な団体への寄附が控除対象になり得るとされ、イギリスではGift Aid(ギフトエイド)によって慈善団体などが税の上乗せを受けられる仕組みがあります。
| 見方 | 主な内容 | 日本のふるさと納税との近さ |
|---|---|---|
| 地域を応援する寄附制度 | 自治体や地域を支えるための寄附 | 韓国の制度は比較的近い |
| 寄附に税制上の優遇がある制度 | 慈善団体や公益団体などへの寄附を税制で支える | 仕組みの一部が似ている |
韓国は地域寄附の仕組みとして日本に近く、アメリカやイギリスは寄附税制として一部共通点がある制度です。
地域を応援する寄附制度
地域を応援する寄附制度として、日本のふるさと納税に近い例に挙げやすいのが、韓国の「故郷愛寄付制度」です。
韓国の制度は、自治体への寄附、地域活性化、税制上の優遇、返礼品に近い仕組みを持っています。そのため、「海外にふるさと納税のような制度はあるのか」と考えるとき、比較対象として取り上げやすい制度です。
韓国の故郷愛寄付制度は日本に近い例
韓国の故郷愛寄付制度は、地域活性化を目的とした寄附制度です。韓国農村経済研究院の資料では、この制度が2023年1月1日から施行され、寄附者が自分の居住地ではない自治体へ寄附できる仕組みとして説明されています。
この点は、日本のふるさと納税にかなり近い部分です。
日本でも、寄附者は自分が応援したい自治体を選んで寄附できます。生まれ育った地域だけでなく、災害を受けた地域、旅行で訪れた地域、返礼品を通じて知った地域なども寄附先になります。
韓国の制度は、寄附者が居住地以外の自治体を応援できる点で、日本のふるさと納税と比較しやすい制度です。ただし、制度の細部まで同じではないため、「同じ制度」とは分けて見る必要があります。
税制上の優遇と返礼品に近い仕組みもある
韓国の故郷愛寄付制度には、税額控除と返礼品に近い仕組みがあります。
韓国農村経済研究院の資料では、寄附者は10万ウォンまでの寄附について全額の税額控除を受けられ、10万ウォンを超える部分についても16.5%の税額控除が用意されていると説明されています。また、自治体は寄附額の30%以内で返礼品を提供できるとされています。
この「地域への寄附」「税額控除」「返礼品」という組み合わせは、日本のふるさと納税に近い印象を与えます。
ただし、日本と韓国では制度の細部が異なります。寄附の上限、控除の計算方法、返礼品の扱い、寄附金の使い道、制度運用のルールは国ごとに違います。そのため、「韓国にも日本と同じふるさと納税がある」と書くより、「日本のふるさと納税に近い要素を持つ制度がある」と表現したほうが正確です。
寄附に税制上の優遇がある制度
海外には、ふるさと納税と同じではないものの、寄附を税制上支える制度があります。
アメリカやイギリスの例は、この分類で見ると扱いやすくなります。どちらも寄附を後押しする仕組みですが、日本のように「自治体を選ぶ」「返礼品がある」「住民税控除が居住地自治体の税収に関係する」という形とは異なります。
アメリカは寄附控除が中心
アメリカには、寄附による税制上の優遇があります。
IRS、つまり米国内国歳入庁は、適格な団体への金銭や財産の寄附について、一定の条件を満たす場合に控除できると説明しています。控除対象になり得る寄附先には、慈善、宗教、教育、科学、文学などを目的とする団体などがあります。
また、IRSは、州や地方政府などの政府機関への寄附についても、公共目的のために行われる場合は控除対象になり得ると説明しています。
この点だけを見ると、公共目的への寄附が税制上扱われるという意味で、日本のふるさと納税と一部似ています。
ただし、アメリカの制度は、日本のふるさと納税とは大きく異なります。主な対象は適格な公益団体や慈善団体への寄附であり、自治体が返礼品を用意して、寄附者が地域産品を選ぶ仕組みではありません。
日本のふるさと納税のように、寄附者が選んだ自治体へ寄附し、居住地自治体の個人住民税控除が大きな論点になる制度とは分けて考えたほうがよいでしょう。
イギリスはGift Aidで寄附先を支える
イギリスには、Gift Aid(ギフトエイド:寄附先の慈善団体などが税の上乗せを受けられる仕組み)があります。
GOV.UKでは、Gift Aidを通じて寄附すると、慈善団体や地域のアマチュアスポーツクラブが、寄附1ポンドごとに25ペンスを追加で請求できると説明されています。寄附者が追加で支払うのではなく、税の仕組みを通じて寄附先の団体に上乗せされる形です。
Gift Aidは、寄附を後押しする制度という点では、ふるさと納税と共通する部分があります。寄附者の行動を税制が支え、寄附先の活動資金が増えやすくなるからです。
一方で、Gift Aidの寄附先は主に慈善団体や地域のアマチュアスポーツクラブです。日本のふるさと納税のように、自治体へ寄附し、返礼品を選び、住民税控除に関係する制度ではありません。
イギリスの制度は「ふるさと納税に近い制度」というより、「寄附に税制上の優遇がある制度」として見るほうが合っています。
日本のふるさと納税との違い
海外制度と比べると、日本のふるさと納税にはいくつかの特徴があります。
特に大きいのは、寄附先が地方自治体であること、返礼品が制度の見え方に大きく関わっていること、居住地自治体の住民税控除が財政面の論点になりやすいことです。
| 比較する点 | 日本のふるさと納税 | 海外の寄附制度に見られる形 |
|---|---|---|
| 寄附先 | 地方自治体 | 慈善団体、公益団体、自治体など |
| 税制上の優遇 | 所得税・個人住民税の控除 | 所得控除、税額控除、寄附先への上乗せなど |
| 返礼品 | 地域産品などが大きな特徴 | 中心要素ではない場合が多い |
| 地域支援 | 寄附先自治体を選べる | 制度によって目的が異なる |
| 居住地自治体への影響 | 住民税控除による税収減が論点になる | 日本と同じ形では論点化しにくい |
返礼品が制度の見え方を変えている
日本のふるさと納税が海外の寄附税制と大きく違って見える理由の一つが、返礼品の存在です。
海外の寄附税制では、寄附先は慈善団体や公益団体であることが多く、寄附は社会貢献や公益活動の支援として見られやすい傾向があります。一方、日本のふるさと納税では、自治体が地域産品や体験型の返礼品を用意しているため、寄附と地域消費が結びついて見えやすくなっています。
返礼品には、地域を知る入口になるという良い面があります。これまで知らなかった自治体に関心を持ったり、地場産品や観光に目を向けたりするきっかけになるからです。
一方で、返礼品が注目されすぎると、寄附金の使い道や自治体の事業より、返礼品の内容だけで寄附先が選ばれやすくなります。ここは、日本のふるさと納税を海外制度と比べるときに外せない違いです。
居住地自治体の税収に関係する点も特徴
日本のふるさと納税では、寄附者が住んでいる自治体の個人住民税控除にも関係します。
寄附先自治体には寄附金が入りますが、寄附者の居住地自治体では住民税控除が生じます。そのため、都市部などでは税収流出が話題になることがあります。
この点は、アメリカやイギリスの寄附税制とは違う見方が必要です。アメリカやイギリスにも寄附税制はありますが、日本のように「寄附先自治体」と「居住地自治体」の間で財源移動が大きな論点になりやすい制度とは構造が異なります。
海外制度と比べると見える日本の特徴
海外制度と比べると、日本のふるさと納税は、複数の要素が重なった制度だと分かります。
自治体を選んで寄附できること。
所得税・個人住民税の控除があること。
返礼品が制度の入口として大きな役割を持つこと。
地域支援と地域産品の発信につながること。
その一方で、居住地自治体の住民税減収や返礼品競争が課題になりやすいこと。
これらが組み合わさっているため、日本のふるさと納税は、単なる寄附税制とも、単なる地域応援制度とも言い切れません。
韓国の故郷愛寄付制度は、地域寄附、税制上の優遇、返礼品の面で日本に近い制度です。一方、アメリカやイギリスの制度は、寄附を税制上支える点では似ていますが、自治体への寄附や返礼品を中心にした制度ではありません。
海外の例を知ると、日本のふるさと納税がどこまで一般的で、どこが特徴的なのかが見えてきます。
なお、海外の税制や寄附制度は変更されることがあります。具体的な控除や手続きは、各国の公的機関の案内を確認する必要があります。
Q&A(よくある疑問)
まとめ
海外にも、地域を応援する寄附制度や、寄附に税制上の優遇がある制度はあります。
ただし、日本のふるさと納税とまったく同じ制度が広く存在するわけではありません。
日本に比較的近い例としては、韓国の故郷愛寄付制度があります。居住地以外の自治体に寄附でき、税制上の優遇や返礼品に近い仕組みがあるため、日本のふるさと納税と比較しやすい制度です。
一方、アメリカやイギリスにも寄附税制はありますが、主な対象は慈善団体や公益団体などです。自治体への寄附、返礼品、個人住民税控除が組み合わさった日本の制度とは違います。
海外の類似制度を見ると、日本のふるさと納税は、地域支援と寄附税制に加え、返礼品や居住地自治体の税収減が重なった特徴的な仕組みであることが分かります。似ている制度があるかどうかだけでなく、どの要素が似ていて、どこが違うのかを分けて見ると、制度全体の姿をつかみやすくなります。
