ふるさと納税と地方交付税の関係は?75%補填の注意点も紹介

ふるさと納税と地方交付税は、どちらも自治体のお金に関係する仕組みです。
ただし、両者は同じ制度ではありません。

ふるさと納税は、自分で選んだ自治体へ寄附を行い、その寄附が所得税や個人住民税の控除に関係する制度です。国税庁では、ふるさと納税について、寄附額のうち2,000円を超える部分が所得税と個人住民税から控除される制度として説明されています。

一方、地方交付税は、自治体間の財源の差を調整し、地域によって行政サービスに大きな差が出にくくするための仕組みです。ふるさと納税が「寄附者が自治体を選ぶ制度」であるのに対し、地方交付税は自治体の財政状況をもとに配分されます。

ふるさと納税と地方交付税の関係で特に重要なのは、ふるさと納税によって居住地自治体の住民税が減ったとき、その減収が普通交付税の算定でどう扱われるのかという点です。

交付団体では、ふるさと納税による住民税減収の75%相当が普通交付税の算定上反映されます。ただし、減収分に対して別枠の補助金がそのまま支払われるわけではありません。不交付団体では同じ形の補填がないため、税収減の影響が残りやすくなります。


目次

ふるさと納税と地方交付税は別の仕組み

ふるさと納税と地方交付税は、どちらも自治体財政に関わるため混同されやすい制度です。
けれども、資金が動く理由も、制度の目的も異なります。最初にこの違いを押さえておくと、後半の「75%補填」の話も理解しやすくなります。

ふるさと納税は寄附と税控除の仕組み

ふるさと納税は、税金を別の自治体へ直接移す制度ではありません。制度上の入口は、地方公共団体への寄附です。

寄附者が選んだ自治体に寄附を行うと、寄附先の自治体には寄附金が入ります。一方で、寄附者の所得税や個人住民税では、一定の範囲で控除が関係します。国税庁の説明でも、ふるさと納税は自治体に寄附を行った場合に寄附額の一部について控除が受けられる制度として扱われています。

そのため、ふるさと納税を見るときは、寄附先自治体に入る寄附金と、寄附者が住む自治体で生じる住民税控除を別々に考える必要があります。

寄附を受ける自治体にとっては収入になりますが、寄附者が住む自治体にとっては、個人住民税の減少につながる場合があります。

この「寄附を受ける自治体」と「住民税が控除される自治体」が分かれる点が、ふるさと納税の財政影響を少し分かりにくくしています。

地方交付税は財源差を調整する仕組み

地方交付税は、自治体間の財源差を調整するための制度です。

地域によって、税収の規模や行政サービスに必要な経費は異なります。人口、面積、道路、公共施設、福祉、教育、防災など、自治体が担う仕事は地域ごとに条件が違います。

地方交付税は、こうした違いを踏まえ、財政力に差がある自治体でも一定の行政サービスを行えるように財源を保障する役割を持ちます。

ふるさと納税のように寄附者が自治体を選ぶ仕組みではなく、自治体の財政需要や財政収入をもとに配分される財政調整制度です。

関係するのは住民税控除が生じる側

ふるさと納税と地方交付税が関係するのは、ふるさと納税によって居住地自治体の個人住民税に控除が生じるためです。

寄附者がほかの自治体へふるさと納税を行うと、寄附先自治体には寄附金が入ります。その一方で、寄附者が住んでいる自治体では、翌年度の個人住民税に控除が反映されます。

居住地自治体から見ると、この控除は税収の減少に関係します。特に人口が多く、ふるさと納税を利用する住民が多い自治体では、控除額も大きくなりやすくなります。

この住民税の減少分が、普通交付税の算定と関わります。


住民税減収は地方交付税でどう扱われる?

ふるさと納税による住民税減収については、「75%が補填される」と説明されることがあります。
この表現自体は制度の説明として使われますが、現金が別枠で振り込まれるというより、普通交付税の算定上、基準財政収入額に反映される仕組みとして見ると分かりやすくなります。

交付団体では減収分の75%が算定上反映される

地方交付税の交付を受けている自治体では、ふるさと納税による住民税減収分の一部が、普通交付税の算定に反映されます。

財務省の資料では、交付団体における扱いとして、地方税収等の75%が基準財政収入に算入され、残りの25%が留保財源になることが示されています。そのため、ふるさと納税による住民税の減少分についても、75%が基準財政収入の減少分として反映され、交付税措置によって補填されると説明されています。

この補填は、減収分に対して別枠の補助金がそのまま支払われる仕組みではありません。

普通交付税は、自治体に必要と見込まれる財政需要と、自治体が得られると見込まれる収入をもとに計算されます。制度上は、これらを基準財政需要額、基準財政収入額と呼びます。

ふるさと納税によって住民税が減ると、基準財政収入額の算定に影響します。その結果として、交付団体では普通交付税の計算上、減収分の75%相当が反映されます。

25%分は留保財源にあたる

交付団体であっても、ふるさと納税による住民税減収のすべてが同じ形で調整されるわけではありません。

地方税収等の75%が基準財政収入に算入される一方で、残りの25%は留保財源とされています。留保財源は、自治体が独自の財政運営に使える余地として扱われる部分です。

そのため、ふるさと納税による住民税減収についても、交付団体では75%相当が普通交付税の算定に反映される一方、25%相当は同じ形では補填されません。

交付団体では一定の調整がありますが、影響が完全になくなるとは言い切れません。75%相当は算定上反映されますが、残る部分もあると見ておくと分かりやすいです。

寄附金収入は基準財政収入に反映されない

寄附を受けた自治体側の扱いも、誤解されやすい部分です。

財務省資料では、ふるさと納税による寄附金収入は、基準財政収入には反映されないと示されています。

これは、寄附を受けた自治体にとって重要な点です。寄附金収入が増えても、それがそのまま基準財政収入に算入されるわけではありません。

このため、ふるさと納税では「住民税が減る自治体」と「寄附金を受ける自治体」で、地方交付税との関係が異なります。

住民税が減る自治体では、交付団体か不交付団体かによって影響の残り方が変わります。一方、寄附を受ける自治体では、寄附金収入が地域事業の財源になる一方で、返礼品や募集にかかる経費も発生します。


不交付団体では同じ形の補填がない

地方交付税との関係を考えるとき、不交付団体の扱いは大きなポイントです。
交付団体では普通交付税の算定上の調整がありますが、不交付団体では同じ形の調整がありません。この違いによって、同じ住民税控除額でも自治体財政への影響の出方が変わります。

不交付団体は普通交付税を受けない自治体

地方交付税の交付を受けていない自治体は、不交付団体と呼ばれます。

不交付団体では、ふるさと納税による住民税減収について、普通交付税による同じ形の補填がありません。そのため、住民税控除額が大きくなると、自治体財政への影響が残りやすくなります。

浦安市は公式ページで、地方交付税交付団体の場合はふるさと納税による減収額の75%が地方交付税により補填される仕組みがある一方、浦安市は地方交付税の不交付団体であるため、地方交付税による補填がなく、市税流出分は減収になると説明しています。

この説明は、不交付団体にとってふるさと納税の住民税控除がなぜ論点になりやすいのかを理解するうえで分かりやすい例です。

都市部で論点になりやすい理由

都市部の一部自治体では、ふるさと納税による住民税控除額が大きな論点になります。

人口が多い自治体では、ふるさと納税を行う住民の人数も多くなりやすく、住民税控除額が大きくなることがあります。さらに、その自治体が不交付団体であれば、普通交付税による同じ形の調整がありません。

そのため、寄附者が多く住む自治体では、住民税の減収が行政サービスの財源にどう影響するのかという議論が起こりやすくなります。

ただし、すべての都市部自治体が同じ状況にあるわけではありません。交付団体か不交付団体か、住民税控除額がどの程度か、寄附受入額があるか、自治体全体の財政規模がどうかによって影響の受け方は変わります。

交付団体か不交付団体かは年度で変わることがある

交付団体か不交付団体かは、固定された肩書きではありません。

自治体の財政状況や普通交付税の算定結果によって、年度ごとに変わる場合があります。そのため、特定の自治体について判断するときは、過去のイメージだけで見るのではなく、各自治体が公表している最新の財政資料や説明ページを確認する必要があります。

ふるさと納税による減収の影響を見るときも、その自治体が対象年度に交付団体なのか、不交付団体なのかを確認すると理解しやすくなります。


ふるさと納税は地方交付税の代わりではない

ふるさと納税と地方交付税は、どちらも自治体にお金が動く仕組みですが、目的は大きく異なります。ふるさと納税は寄附者の意思によって寄附先が選ばれる制度であり、地方交付税は自治体の財政状況を踏まえて配分される制度です。

この違いを押さえると、ふるさと納税を地方交付税の代わりとして見ることがなぜ難しいのかが分かります。

ふるさと納税は寄附者が自治体を選ぶ

ふるさと納税では、寄附者が寄附先の自治体を選びます。

生まれ育った地域、応援したい地域、災害を受けた地域、返礼品を通じて知った地域など、寄附先を選ぶ理由は人によって異なります。寄附金の流れは、寄附者の関心、自治体の発信、返礼品、使い道の見せ方などに左右されます。

そのため、ふるさと納税による資金の動きは、財政力の弱い自治体へ自動的に配分されるものではありません。多くの寄附を集める自治体もあれば、あまり寄附が集まらない自治体もあります。

ここが、地方交付税との大きな違いです。

地方交付税は財政状況を踏まえて配分される

地方交付税は、自治体の財政状況を踏まえて配分されます。

自治体間の財源の不均衡を調整し、どの地域でも一定の行政サービスができるように財源を保障するための制度です。

ふるさと納税は、寄附者の選択によって資金が動く制度です。地方交付税は、自治体間の財源差を調整する制度です。

どちらも自治体財政に関係しますが、資金が動く理由も、配分の考え方も違います。そのため、ふるさと納税を「地方交付税の代わり」と見るのは、制度の目的から考えるとやや無理があります。


地方交付税との関係を見るときのポイント

ふるさと納税の財政影響は、一つの数字だけでは判断しにくいテーマです。寄附受入額だけを見ると、寄附を受ける自治体の収入に注目しがちです。住民税控除額だけを見ると、居住地自治体の減収に偏って見えます。

地方交付税との関係を見るときは、自治体の区分、住民税控除額、寄附受入額、経費を分けて確認すると全体像をつかみやすくなります。

交付団体か不交付団体かを見る

ふるさと納税と地方交付税の関係を見るときは、まずその自治体が交付団体か不交付団体かを分ける必要があります。

交付団体では、住民税減収分の75%相当が普通交付税の算定上反映されます。一方、不交付団体では同じ形の補填がありません。

この違いを押さえると、同じ住民税控除額でも、自治体財政への影響の残り方が変わります。

自治体の区分ふるさと納税による住民税減収への影響
交付団体減収分の75%相当が普通交付税の算定上反映される
不交付団体同じ形の交付税補填がなく、税収減が残りやすい
寄附を多く受ける自治体寄附金収入が増え、地域事業の財源になる
住民の寄附が多い自治体個人住民税の控除により税収が減る

ふるさと納税の影響は、寄附を受ける側と、住民税が控除される側で異なります。片方だけを見ると、制度全体をつかみにくくなります。

控除額・交付税措置・受入額を分けて確認する

地方交付税との関係を見るときは、次の項目を分けると全体像を理解しやすくなります。

確認する項目内容
住民税控除額居住地自治体の税収減に関係する金額
普通交付税の算定上の調整交付団体で減収分の75%相当が反映される仕組み
不交付団体かどうか同じ形の補填があるかどうかに関係する
寄附受入額寄附先自治体に入る寄附金
経費返礼品や募集にかかる費用
寄附金の使い道地域事業や行政サービスへの活用内容

受入額だけを見ると、寄附を受ける自治体の話に偏ります。控除額だけを見ると、居住地自治体の減収に偏ります。

地方交付税との関係を考える場合は、住民税控除額が普通交付税の算定でどう扱われるのか、そして交付団体と不交付団体で何が違うのかを分けて確認すると、制度の関係をつかみやすくなります。

ワンストップ特例制度では地方側の負担も見えやすい

自治体財政への影響を知るうえでは、ワンストップ特例制度による控除の見え方も確認しておくと理解しやすくなります。

国税庁では、ふるさと納税として寄附した金額について、控除を受けるには原則として確定申告が必要としています。そのうえで、確定申告が不要な給与所得者などについては、ふるさと納税先が5団体以内の場合に限り、寄附先団体に申請することで寄附金控除を受けられる制度があると説明されています。

ワンストップ特例制度を使うと、確定申告をした場合とは控除の表れ方が変わります。浦安市の公式ページでは、ワンストップ特例制度を使用すると、本来は国に納められる所得税から控除される金額が、市や県に納められる住民税から控除されるようになるため、地方の負担が大きくなると説明されています。

ふるさと納税の利用者側からは見えにくいものの、自治体財政を考えるうえでは重要な部分です。個別の控除額や申告の要否は、収入や家族構成、寄附額などによって変わるため、具体的な手続きは国税庁や自治体の案内を確認する必要があります。


Q&A(よくある疑問)

ふるさと納税と地方交付税は同じ仕組みですか?

同じ仕組みではありません。ふるさと納税は、個人が選んだ自治体へ寄附し、その寄附が所得税や個人住民税の控除に関係する制度です。地方交付税は、自治体間の財源の不均衡を調整し、一定の行政サービスを支えるために配分される財政調整制度です。

ふるさと納税で減った住民税は地方交付税で補填されますか?

地方交付税の交付団体では、ふるさと納税による住民税減収分の75%相当が、普通交付税の算定上反映されます。ただし、これは専用の補助金が別枠で支払われるという意味ではありません。また、不交付団体では同じ形の補填はありません。

交付団体ならふるさと納税の影響はないのですか?

影響がないとは言えません。普通交付税で調整される部分があるとしても、すべてが補填されるわけではありません。地方税収等の25%は留保財源にあたるため、交付団体でも影響が完全になくなるとは考えないほうがよいでしょう。

不交付団体はなぜ影響が残りやすいのですか?

不交付団体は普通交付税を受けていないため、ふるさと納税による住民税減収について、交付団体と同じ形の調整がありません。そのため、住民税控除額が大きくなると、税収減が自治体財政に残りやすくなります。

寄附を受けた自治体の寄附金収入は地方交付税で減らされますか?

財務省資料では、ふるさと納税による寄附金収入は基準財政収入には反映されないと示されています。そのため、寄附金収入が増えたからといって、その分がそのまま普通交付税の基準財政収入に算入されるわけではありません。

自治体財政を見るときは何を確認すればよいですか?

住民税控除額、交付団体か不交付団体か、普通交付税の算定上の調整、寄附受入額、返礼品や募集経費、寄附金の使い道を確認すると、財政への影響を理解しやすくなります。受入側だけでなく、控除が生じる居住地自治体の側も見ることが欠かせません。


まとめ

ふるさと納税と地方交付税は、どちらも自治体財政に関係しますが、同じ仕組みではありません。

ふるさと納税は、個人が選んだ自治体へ寄附し、その寄附が所得税や個人住民税の控除に関係する制度です。寄附先の自治体には寄附金が入り、寄附者が住む自治体では住民税控除が生じます。

地方交付税は、自治体間の財源の不均衡を調整し、一定の行政サービスを支えるために配分される制度です。交付団体では、ふるさと納税による住民税減収分の75%相当が普通交付税の算定上反映されますが、不交付団体では同じ形の補填はありません。

また、寄附を受けた自治体の寄附金収入は、基準財政収入には反映されないとされています。

ふるさと納税と地方交付税の関係を見るときは、寄附を受ける自治体、住民税が控除される自治体、交付団体か不交付団体か、普通交付税で調整される部分と残る部分を分けて確認すると、制度全体を理解しやすくなります。


参考情報

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